コロナ明けと桜前線

あんなに頑張って勉強して入った大学だったのに、入学した途端にコロナでリモートになった。

しかし息子はサバサバした顔で、オンラインや映像授業に何なく馴染み、かえって好都合と大学生活とバイトとコロナの巣ごもり生活を楽しんでいた。

ライン通話やスカイプで仲間とゲーム対戦したり、SNSで仲間とやり取りを頻繁にしていた世代なので、抵抗もなかったらしい。

ウチは家族全員がインドア気質なので、この期間の社会の変化はとてもありがたいものだった。

もちろん弊害もあった。

家族全員にとって、自分を見つめ直す内省の期間だった。

 

もう3年も経ったのか。なんだか前世の話みたいだ。

 

3年ぶりに親族で集まった正月の席で、息子はなんでもないという風な顔をして宣言した。

「今年一年、休学する。就職活動はしない」

そんな気はしていたけど、そうかーやっぱりなぁという思いだった。

親に直接話さずに、親族の前という公の場で言うことが、彼にとっては意味があったのだろう。

一応大学生にはなったけど、実感ないままにプレ就職活動をして、企業に属するって大変そうで楽しくないな、と気づいてしまったそうである。

うーーーむ 蛙の子は蛙だ。そうだろうな、と納得している私と夫。

しかし、私の親(息子にとっては祖父母)は「休んだ後どうするの!」と声を荒げた。

「何も考えてない」

その場にいた全員、口に出さずとも「こりゃ辞めちゃうだろーな…」という顔をして目を合わせた。

好きにしなよ。でも学費はもう出せないから。

自分の道は自費で賄ってくれ。オナシャス!

 

今年の桜の開花は早かった。

気づいたら息子は家に帰ってこないで、桜前線と共に北上する旅に出ていた。

ラインで「今どこ?」と聞いてみる。

ほとんどの場合、返事がない。

のたれ死んでもわからないな〜これじゃ。

 

諦めた頃に写真だけ送られてきた。

近所の公園の桜だった。

めっっっちゃ近くじゃないか!

帰ってきてるなら連絡しなさいよ〜と送る。

その日の夜中に、のっそりと熊が巣に帰るように帰宅して

大量の洗濯物を鞄から出して部屋にこもって寝ていた。

 

もう明日から4月だ。

さすがに私も変わらなくちゃマズイなと思っている。

でも、コロナ前に思っていたこととは別の方向が、私のコンパスの指し示す方角らしい。

 

大勢とは違っても自分に正直に生きようよ

自分自身がまだ日和ることもあるけれど

それが3年かけて出した答え。