新年を加工食品と寿ぐ2023

あけましておめでとうございます。

今年のお正月は3年ぶりに弟家族と実家で集えた。

高齢両親がとりあえず健康で健在であることの幸せを、何物にも代え難いとしみじみ祝った。

 

3年ぶりに会った甥っ子たちは成長著しく、前回会ったときは小学生だったKちゃんが今春中学卒業で、来週から高校受験と聞いて驚く。

すっっごい浦島太郎・感。え?いつの間に??早すぎない??

今更ながらコロナが奪った時間に慄いた。

 

義妹は、今年から勤め先の派遣社員配属から正社員になるらしい。

「すっっごいじゃない!!おめでとう!良かったね」

しかし「本当に良かったのかどうかはまだ分からないんです…」と浮かぬ顔だ。

義妹は輸出入業務を扱う会社で働いている。

昨今の円安円高乱降下やウクライナ侵攻の影響で、仕事がハードすぎて次々と同僚が辞めていき「気づいたら私だけ残ってた」そうで、辞められないよう正社員にさせられた感もあるらしい。

内情を聞くと、派遣社員時代を思い出して義妹の懸念にも合点がゆく。

派遣の時は時給計算で給与が出るけど、社員だとそうもゆかない。残業代なぞ出してくれない会社もあるし。いや今時はそんなことないでしょ、強気で行かなくちゃ今の時代、頑張って!と励ます。

「派遣も新しく大量入社させるって人事の人からも聞いたし、もう面倒な業務は全部そっちにふっていこうと思って!この際、自分が大切だし」

ん? そもそも派遣社員時代、そういう社員に腹立てていたような…と義妹を見つつ、話は輸入食物のことに変わった。

 

ウクライナ侵攻があって、小麦の輸出の変化がヨーロッパでは大きかったが、日本でも影響があったという話が面白かった。

「小麦の代替に米粉を使用しようって動きがあって需要が伸びたんですけど、日本産の米粉が市場に出回る前に東南アジア産の米粉の輸入が増えて、結構売れたんですよ」

「へえ!そうか、タイ米とか」

「でも割とすぐ日本産の米粉が市場に溢れちゃって、そこまで米粉ブームはこなかったんですよね」

それで思い出した。

去年、小麦の値上げは色々なメディアで報道していた。

実際に小麦は値上ったし、パンや菓子類は値上がりしサイズは小さくなった。

しかし、近所のスーパーのパン屋ではそこまで影響はなく、大きさも味もほぼ変わらなかった。どういうカラクリなのかと食品成分表示を見てみたら、小麦粉の文字はなく、代わりに「加工でんぷん」と最初に表示されていた。

学生時代、成分表示は表示順に占める割合が多くなると習った。加工でんぷんの次はショートニング、大豆レチシン、砂糖の代わりにアセスルファムKスクロースなどの人工甘味料が続く。

バターも砂糖も使ってない、全て人工物でできたパン、いやこれはパンですらない。

私たちは何を食べさせられてるんだ。

スーパーの店先にあるオーブンで焼き、出来立てです!と良い香りを振り撒きながら、実際売られているのは冷めてビニールにパッキングされている工業製品だ。

米粉を使った新しいレシピを開発するのにもコストがかかる。

この「パンもどき」が一番コスパの良い解決法だったんだろうか。

それとも、もっと前から「加工食品」が私たちの生活の中に忍んでいて、気づかなかっただけなのだろうか。

 

そんなことを義妹に話したら「輸入食物は本っ当にひどいですよ!特に大豆が酷くて私、大豆加工品は国産のものじゃないと食べる気がしないですもん」と憤慨する。

コンテナ内に石やら虫が入っていようが、残留農薬の値が高かろうがお構いなし。倉庫の管理も劣悪で、害虫が発生してもなかったことにされて出荷され、加工されているという。

「えーーーでも市販の納豆も豆腐も油揚げも、みんなアメリカ・カナダ産(遺伝子組み換えでない)に成りかわっちゃってるじゃない…しょうゆも味噌もだよ…」

「だから私、◯かめ納豆とか○ッコーマンの醤油とか、大手のものは買わないです」

そうだった。義妹は、かなり厳格なマクロビオティック食の信者でもあった。

でもそれにはきっかけもあって、義妹が次男を妊娠臨月の時に震災があったのだ。

あの当時、新生児を抱えてミルクを調合する水の確保に苦労し、幼稚園に通い出した長男に持たせるお弁当の食材に悩んでいる義妹に、何もできず後ろめたかった自分を思い出す。同時に偉いなぁと賞賛の気持ちも湧き上がる。

「それなのに、パパは在宅勤務なのを良い事に菓子類スナック類食べ放題で!!健康診断で「要注意」もらってきたんですよ!子ども達も一緒に食べちゃうし買って来させるし!」

思わぬ攻撃を喰らって、隣で弟がたじろぐ。

「コロナで在宅勤務増えたらさ、楽しみ食べることだけなんだよねー。通勤減ったら太っちゃってさ、貴重な運動だったんだな駅の階段の上り下りも」

あんた、奥さんがこんなに健康に気を使った食事を手作りしてるのに…と弟をじっと見て、

そうだった、マクロビ食って男の人ウケ悪いんだと思い出した。

前に、隠れてカップラーメン食べてたよね…

ちなみに義妹はフル勤務で29日まで仕事があったらしい。

おせちはほぼ手作り、少しばかり買う加工食品も、無添加無香料無着色品を選んでいる、とのこと。

すごい、偉すぎる。私は彼女より時間あるはずだけど、そこまで徹底できない。

でも義妹も疲れきっていた。無理もない。

手伝ってあげなさいよと弟をこづくと、できることはしていると返事をされた。

でもさぁ、美味しいもの食べたいじゃん。

そう言って口に運ぶのは、ピンク色のロースハム。

弟にとっては、実家でしか食べられない味だ。

 

日本人は、狭く資源に乏しい国土で生きてゆくために、食物を加工して生きながらえてきた。

しょうゆも味噌も漬物も干物も、生きる知恵だった。

現代日本の、この加工物の氾濫した状態は必然なのだと言えるだろうか。

スーパーの棚にはいつでも食品が溢れんばかりだが、結構な量が廃棄される。

間違った方に発展しちゃった感が否めない。

 

今日、スーパーに行ったら「簡単!春の七草フリーズドライ お粥に入れるだけ」ふりかけが売っていた。しかも飛ぶように売れていた。

ウソでしょーー春の七草まで加工品なんだって膝から崩れ落ちちゃったよ〜

そこまでくると、何のための七草と突っ込みたくなる。

別にさ「七草セット」野菜を購入しろとか言わないけど

大根だけ蕪だけでも良いから、生のお野菜買って、お米を炊いてお粥作って、料理しようよ。

それが健康に結びつく。

私はそう信じている。